*196年*それでも世界は廻る
お義父さんーーー。
マルタ「今年もよろしく。トレニアさん」
トレニア「去年はお義父さんの背中を見ていましたけど、今年は隣です!」
マルタ「はははッ、そういえばそうだね。君も強くなったな」
マルタ「・・・・・」
トレニア「お義父さん?」
マルタ「・・・息子の背中を見るとは。もう、安心だな」
あの時に見た、とても優しく、とても温かな微笑みが忘れられない。
いつも私達を見守ってくれていた、お義父さんの存在がーーー。
義理とはいえマルチェロの両親は・・・特に同じ騎士隊に所属し、顔を合わせる機会が多かった義父マルタは、旅人からエルネア王国へ帰化し両親のいないトレニアにとって親代わりともいえる存在でした。
息子二人を育て、そして巣立ち、夫婦だけとなっても仲睦まじく暮らしていた旧市街の邸宅。そこから城下の住まいに引っ越してきたのは、妻ジェイミーが亡くなってから約1年後のことでした。
大きな屋敷に一人きり。何とはなしに淋しかったのかもしれません。
区は違えど互いに家が近所になってからは行き交いが増えました。
我が家の様子を見にマルタの方から来てくれることもあれば、孫のジニアが祖父の元へ遊びに行くこともしばしば。
妻に先立たれ、食事が疎かになりがちだったマルタに差し入れをしていた思い出もトレニアにはあります。
関係が密であればあるほど、悲しみも深く。
胸をえぐられるような感覚がしばらく続きました。
とはいえ実の息子であるマルチェロの方が何倍も悲しみは深いはず。
かける言葉がありませんが、なんとか元の元気を取り戻してほしいです。
おじいちゃんが亡くなり、ジニアも沈みます。
ジニアとキク・・・孫2人の顔を見せられたことがせめてもの親孝行となったでしょうか。
心配してくれてありがとう、ウィアラさん。
ウィアラさんおすすめのアヒージョを食べて、少し元気を取り戻せたような気がしました。
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お義父さんを失って悲しみもまだ癒えぬままですが、近衛騎士隊トーナメントが今年も変わることなく始まります。
頑張ろうね!マルチェロくん!
きっと天国からお義父さんが見ているよ!